飲む中絶薬メフィーゴ®パック発売について
今回、飲む中絶、流産薬(経口中絶薬)メフィーゴパックが承認されました。
※ 中絶薬、流産薬について
メフィーゴパックはミフェプリストンという妊娠のホルモン(プロゲストン)を抑える薬と、ミソプロストールという子宮収縮(陣痛)を起こさせる薬との組み合わせを服用することによって、妊娠初期(妊娠9週0日、63日目)の人工妊娠中絶が可能となります。
海外では30年以上前から使用されていますが、日本では2023年4月に認可されました。
服用方法
メフィーゴパックによる人工妊娠中絶は全例入院での管理となります。母体保護法指定医師のいる施設(人工妊娠中絶手術が施行可能で入院できる医療機関)で、入院時、最初のミフェプリストンを入院時1錠、指定医師の面前で服用し、服用後36〜48時間後に2錠目のミソプロストールを指定医師の面前で服用、口の中(両頬に2錠ずつ、合計4錠、ハムスター状態)に30分間含んだ後に飲み込みます。
入院管理で胎嚢が排出(中絶完了)までは外出禁止です。人工妊娠中絶が24時間経過後も完了しない場合は手術による人工妊娠中絶を行います。
妊娠中絶成功率・副作用・重大事象
メフィーゴパック服用により約9割の方が8時間以内に中絶が完了します。しかし海外の主要医学学術雑誌の報告を参照すると
LANCET(2020)英国 | NEJM(2018)米国 | |
---|---|---|
中絶薬1回で不成功 | 17% | 16% |
中絶薬を追加で投与 | 14% | 5% |
手術が必要になった(緊急手術含む) | 17% | 9% |
出血多量で輸血 | 3% | 2% |
重症合併症で入院 | 1% | 1% |
治療完了するまでに要した日数 | 27.0日±14.2日 | データなし |
また米国食品医薬品庁(FDA)の報告では2000年〜2018年で24人の死亡例が報告されています。
以上のように重大な副作用、事故事例も報告されています。
日本の人工妊娠中絶手術数
では日本で年間何件の人工妊娠中絶手術が行われているのでしょうか。令和3年度の全国の人工妊娠中絶手術件数は126,174件です。これは令和元年までの年間15〜16万件からコロナ禍の影響もあり減少していると思われます。令和4年の出生数が80万人を切ったというのに。。
仮に15万人が全て経口中絶薬による人工妊娠中絶を行った場合(中絶薬による人工妊娠中絶は9週までなので、実際はありえませんが)結局手術となる方が年間約2万人、輸血が必要になる方が約4,000人、重症合併症が約1,000人ということになります。
人工妊娠中絶手術によるトラブル
では現状の外科的手術による合併症を見てみましょう。手術件数は吸引手術(自動、手動MVA)、掻爬手術、両方を含みます。母体保護法指定医のいる全国の産婦人科施設:4,154件 2012年1年間に人工妊娠中絶手術施行例、108,148件を対象にした調査。
合併症 | 発生件数=391 | 発生頻度 |
---|---|---|
遺残・再手術 | 295 | 0.3% |
大量出血 | 32 | 0.03% |
子宮穿孔・損傷 | 27 | 0.02% |
ショック | 12 | 0.01% |
重症感染症 | 4 | 0.004% |
日本は比較的合併症の多い掻爬法による手術がいまだに多いのですが、海外のデータに比べても合併症は少なく、当院をはじめ合併症の少ないWHOも推奨している手動吸引法による手術ではさらに頻度が少なくなります。
中絶薬内服の人工妊娠中絶による合併症の頻度よりひと桁少ないことがわかります。
当院では合併症の極めて少ない《手動吸引法:MVA》による手術をおこなっています
現在、一部「女性の心と体にやさしい」とセンセーショナルに報道されていますが、実際はどうでしょうか。赤ちゃんを中絶するという悲しみ、1日以上入院して結局合併症に悩まされる。
私は妊娠中絶にいたらないように低用量ピルでしっかり避妊をすることが一番大切なことだと思います。
最後に海外を代表してフランスの低用量ピル普及率をお示しします。
ちなみに日本は正確なデータがないのですが2〜4%程度と言われています。みなさん、いかがお考えになりますか。