人工妊娠中絶手術の手術法について
人工妊娠中絶手術には真空吸引法と掻爬(そうは)法という2通りの方法があります。吸引法は子宮の内容物を吸い出す方法で、当院で行なっている「手動真空吸引法」と「電動真空吸引法」があります。
手動真空吸引法は掻爬法に比べて手術時間も短く、出血も少なく、子宮内膜へのダメージも少ないことが特徴です。
WHO(世界保健機構)も掻爬法ではなく真空吸引法を推奨しています。
掻爬法は器具を使って内容を掻き出す方法で、いまだに広く行われていますがトラブルの多い手術法です。
※症例によっては手動真空吸引法(MVA)の適応にならない場合がございます。
手動真空吸引法(MVA)
堀産婦人科で行っている手術手技は手動真空吸引法(Manual Vacuum Aspiration : MVA)という最も子宮に優しい、WHOも推奨する手術法です。
この手術は子宮のなかに柔らかい細いチューブを差し込んで、手動吸引器で内容物を吸い取る方法です。
現在、吸引法を行なっている施設のほとんどは電動真空吸引法です。この方法は掻爬法よりは安全ですが、金属製のチューブを使い電動ポンプで吸引するので、子宮に傷をつけてしまうことや穿孔(突き抜けてしまう)を起こすことがあります。
それに比べて手動真空吸引法はチューブがポリプロピレン製で柔らかくしなやかなため、子宮の形に合わせて愛護的に吸引操作を行うことができ、ポンプと違い手動で吸引するため、微妙な調整が可能で、きわめて安全確実に手術を行うことができます。
また滅菌されたディスポ(使い捨て)製品ですので1人の患者様に1セットを使い、使用後は破棄するので感染の心配はありません。
痛みを伴う子宮の出口を広げる前処置は当院では妊娠10週までは行いません。妊娠11週の症例では安全のため処置を行います。
【注意】症例によってMVAを使用できない場合があります。
手術費用とは別にキット代金14000円をご負担いただきます。
掻爬(そうは)法
もうひとつは、掻爬法といって、子宮内の内容物を先の太いピンセットのような器具(鉗子)で取り出したり、スプーンのような器具(キュレット)で掻き出す以前から行われている手術法で、日本ではいまだに圧倒的に多くの施設で行われています。
子宮の中の内容物を取り出す手術としては基本的なものですが、手作業で感覚的に行うため、術者の技量に負うところが多い術式です。
デメリットとしては、手術時間が長くなり、出血量も多く、注意を払っても、子宮に傷をつけたり、穴を開けてしまうこと(削除)が起こり、不妊症や腹膜炎の原因になり以前より問題になっていますがなかなか改善されません。
中絶手術を扱う施設で、掻把法を推奨する説明を見受けます。合併症に差がない、感染のリスク等とありますが、合併症は明らかに吸引法が少なく、滅菌が不十分など今の医療ではあり得ませんのでご注意ください。