初診では何をする?費用は?
生理予定日に生理が来ない・体調がいつもと違うと感じたら、、、妊娠している可能性はありませんか。
まずは妊娠検査薬での検査を行いましょう。キットはドラッグストアやインターネットで手軽に入手できます。尿にスティックを浸し、判定窓にラインがでたら陽性です。反応が出たら産婦人科のクリニックへ!初めてクリニックで妊娠検査を受ける前には、検査の内容や費用、持ち物などについてあらかじめ知っておくと安心です。今回は検査内容、費用、注意点などをお話しします。
妊娠は病気ではありませんね。そのため検査は基本的には健康保険の対象外、自費診療となります。そのため、風邪や体調不良で病院を受診する時よりも費用が高くなることも把握しておきましょう。(異常妊娠や妊娠に関するトラブルなどは保険診療となります。)
【生理がこない!】
生理周期がおおむね順調(28 日周期前後)のかたで、生理予定日を1週間過ぎても生理がこない時には妊娠検査をしましょう。
妊娠週数の数え方は、妊娠が成立した前の生理(最終月経)を「妊娠0週0日」として分娩予定日を「40週0日」に設定します。生理が28日周期のかたは生理開始から約2週間目で排卵しその後に受精するので、「妊娠1週」というのは実際は妊娠しておらず、「妊娠2週」でやっと受精、「妊娠4週」目では妊娠していなければ生理になるはずですが、妊娠していれば検査薬がおおむね陽性に出るようになります。妊娠するとhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。検査キットは25〜50 IU/Lという値で陽性が出るように設定されています。
妊娠ごく初期の場合は検査が陰性になるので、生理予定日から1週間後を目安に検査をすればいいでしょう。1週間後の検査が陰性でもなにかおかしいと思ったらさらに1週間後に再検査をしましょう。たまたま生理が遅れていたり、飲水が多い場合陰性にでることがあり注意が必要です。
基礎体温のチェック
妊娠を希望され、妊活中は基礎体温の測定を習慣化することをお勧めします。婦人体温計を使って朝起床時に計測します。基礎体温を測っておくと、体温の変化で妊娠の可能性があるかチェックできます。また生理不順の方はちゃんと排卵をしているかどうかの確認ができます。
基礎体温は排卵後、黄体ホルモン(妊娠を維持するホルモン)の作用で体温が上昇します。高温期が12〜14日で終了すると生理が始まりますが、妊娠している場合はこうした高温期が16日以上継続し生理も来なくなります。高温期が続いていたら妊娠検査薬で検査しましょう。
【さあ産婦人科デビュー】
妊娠反応陽性!おめでとうございます。
妊娠検査の適切なタイミング
妊娠の可能性に気付いたら、いつクリニックで妊娠検査を受ければ良いのでしょうか?
クリニックでは腟からの超音波検査(エコー)で子宮の中に赤ちゃん(胎嚢、卵黄嚢、胎芽、胎児。妊娠8週までを胎芽、9週以降を胎児と呼びます)がいるか、子宮、卵巣に異常はないかなどを診察します。
妊娠初期の超音波所見
妊娠している場合、最後の生理が始まった日から数えて4週目では妊娠反応は陽性になりますが前半では超音波で胎嚢を確認できません。5週になると胎嚢が見え、その中にリングのように卵黄嚢が見えてきます。そして5週後半から6週前半になると、待ちに待った赤ちゃんの心拍が確認できるようになります。そのため、この時期が病院で妊娠検査を受ける適切なタイミングといえます。
妊娠5週 (図1)丸いリングが卵黄嚢
注意を要する妊娠初期の疾患
子宮外妊娠(異所性妊娠)
子宮内膜以外の場所に妊娠した状態を異所性妊娠といいます。生理が遅れ、ある程度日数がたっても子宮の中に胎嚢が見えない場合異所性妊娠を疑います。胎嚢はhCGが2,000 IU/L以上で子宮の中に確認されます。例えば妊娠7週になっても胎嚢が見えない場合、採血でhCGを測定し、5,000IU/Lであれば子宮内に見えなければいけないので異所性妊娠を強く疑い、1,000IU/Lであればまだ見えてこないはずですので、時間をあけて再度検査をします。
異所性妊娠は多くは卵管など子宮の外に着床する子宮外妊娠で、子宮の周りに胎嚢が確認できることもあります。子宮内の子宮頸管(子宮の出口)に着床する頸管妊娠も異所性妊娠に含まれます。
異所性妊娠と診断された場合、手術も含め厳重な管理が必要となります。
稽留流産
赤ちゃん(胎児、胎芽)は死亡していますが、出血や腹痛などの症状がない状態を稽留流産といい、超音波検査でのみ診断が可能です。胎児、胎芽を確認できるにもかかわらず心拍動が認められない場合、診断されます。ただ初期の場合、心拍が分かりにくいこともあるので、症状がない場合は時間をあけて再検査し、胎児、胎芽の成長がみられない場合確定となります。子宮内容の排出を待つこともありますが、多くは手術の対象になります。
枯死卵
子宮内に胎嚢は見られるが胎芽が確認できないものを枯死卵といいます。
不全流産
流産し、子宮内容の排出、出血が始まっていますが一部が子宮内に残っている状態を指します。
完全流産
子宮内容全てが自然に排出されてしまった状態で、出血や腹痛は治まっている場合も多く、その場合は手術をせず、経過観察をしていきます。
切迫流産と治療
妊娠初期の切迫流産とは「流産しかかり」という意味ではありますが実際は心拍確認の後に出血があった場合(いわゆる茶オリ)のことを指し、出血が直接流産に結びつくことは稀です。妊娠初期に約2割にみられるともいわれ、原因はいくつか考えられますが、この時期は絨毛という胎盤のもとになる組織が着床した子宮内膜の細い血管に入り込んでいくことによって胎盤が作られていきます。妊娠初期の出血は胎盤が出来上がる過程で子宮内膜の細い血管が破綻して起こると考えられています。
また、流産の原因の多くは染色体異常によるものが多いため仮に薬で出血が止まっても、染色体は治すことができないので有効な薬物治療はありません。安静による流産予防効果も確立されていませんが、仕事の忙しい妊婦のほうが、そうでない妊婦に比べて切迫流産、流産率が共に高いという報告もあり、現在のガイドラインでも「休職や安静による予防効果は確立されていないが、勤務内容によるリスクも考慮し、個々の症例における勤務緩和や安静の必要性を判断する(C)」となっています。
絨毛膜下血腫
絨毛膜下血腫とは胎嚢の周りに超音波検査で黒〜グレーの領域(EFS:echo free space)
が観察されることがあります。超音波で液体が黒〜グレーに描出されるため、この領域は「水」か「血液」です。胎嚢の中の黒い領域は後の羊水、水ですね。
絨毛膜下血腫(EFS)も同じように見えますが、水なのか血液なのかはわかりません。妊娠初期のEFSのありなしで流産率に違いはないと考えられています。妊娠の15~20%は流産に至るのでEFSが原因なのかはわかりません。ほとんどが自然に消えるか目立たなくなりますが、なかには徐々に大きくなったり、外出血を伴うものもあり、これらは血腫だと考えられ、感染を起こし流産に至ることもあるので、安静や薬物療法を行うこともあります。
妊娠検査に必要なもの
妊娠検査でクリニックを受診するときは、受診に必要なものや検査を受けやすい服装についてあらかじめ知っておきましょう。
また、妊娠検査を受ける際には次のような情報がとても重要となります。事前にメモなどに記入しておき、診察の際に担当の医師に伝えましょう。
- 最後に生理が始まった日、生理周期は順調か
- いままで妊娠の経験がある方は人工妊娠中絶も含めた妊娠歴
- アレルギーや治療中の病気があるかどうか
- 家族に高血圧、糖尿病などの疾患や遺伝性、家族性の病気の方がいるか
なお、基礎体温を習慣的に計測している方は、基礎体温表も持参しておきましょう。
お産をする病院、実家へ里帰りをするかなどはまだ決めなくてかまいません。
妊娠初期は体調不良も重なり、心配なことばかり。心配事や疑問点なども先生に気軽に質問してください。ただ、インターネットは妊娠に関して間違った情報、根拠のない個人的な意見なども多く、あまり検索に没頭することは控えた方がいいと思います。あくまでも参考程度にとどめましょう。
どんな病院、クリニックを受診するか
妊娠初期の初診から分娩まで同じ病院、産院にかかるのであれば問題ありませんが、里帰り(帰省)分娩や産休までは職場の近くのクリニックで健診を希望されることも多いと思います。注意しなければいけないことは、大きな病院などはその病院でお産をしなければ妊婦健診のみを受け付けていない場合もあります。また不妊専門のクリニックはもちろん、初期までしか健診をしないクリニックもあり、その場合は他の施設に転院しなければいけないので、事前にクリニックのHPで診療方針で妊婦健診に力を入れていることを確認しましょう。
セミオープンシステム
当院は港区高輪にあり、近くには愛育病院、山王病院、NTT関東病院、日赤医療センターなど大病院が目白押しですが、港区内で分娩を取り扱う開業医は祖父の代より3代続いた分娩取り扱いを私の代で平成18年にとりやめたのを最後に絶滅しました。(笑)
クリニックでの妊婦健診のひとつの問題点は、休診日や夜間のトラブルに対応できない点があります。
セミオープンシステムとは、お産は提携病院で、健診はクリニックで行います。それによって、クリニックが対応できない時間帯は病院を受診することができます。クリニックは大きな病院とちがい待ち時間も少なく妊婦さんの負担も少なくなります。
また愛育病院や日赤などの周産期センター病院は重症度の高い妊婦症例にマンパワーを多く配置するために、リスクの低い妊婦さんはわたしたちセミオープンシステム登録施設で健診を行うことによってセンターの混雑を回避し、より重点的に重症者の診療にあたることができるという一石二鳥のシステムです。特に愛育病院は里帰り分娩の妊婦さんも登録できるため安心して当院で健診を行うことができます。
保険証
妊娠検査で病院を受診する際には、健康保険証を必ず持参しましょう。
妊娠検査の結果気になる症状があった場合・生理不順や不正出血がみられた場合は妊娠検査が医療行為とされ、健康保険が適用となることがあります。
保険証を持参していなかった場合、思わぬ事態が発生しても全額自己負担になってしまうため注意が必要です。
ちなみに、健康保険証を持たずに受診した場合でも、月をまたぐ前にもう一度病院に行って保険証を提出すれば差額は返金してもらうことができます。
生理用ナプキン
妊娠検査の内診では、検査のため腟内から少量の出血する場合があります。これは妊娠すると子宮の出口が出血しやすい状態になるからで心配はいりません。
出血に備えて、生理用ナプキンを念の為お持ちください。
妊娠検査は着替えやすい服装で
妊娠検査では内診や超音波検査を行うため、病院に行く際はスムーズに着替えやすい服装にしておきましょう。
身体にぴったりフィットしている・上下がつながっている服装は着替えに時間がかかってしまうため、なるべく避けましょう。また冬場の長いブーツも脱いだり履いたりが大変ですね。
妊娠検査はいくらかかる?
ここからは、病院での妊娠検査にかかる費用について解説していきます。
妊娠検査は病気を治療する行為ではないため、健康保険の適用外(自費負担)となるのが基本です。
ただし、妊娠検査の結果によっては流産などの異常所見がある場合や、もともと他の婦人科疾患や持病がある場合など健康保険が適用されるケースもあります。妊娠検査で思わぬ事態になった時のために、受診の際は保険証を必ず持参しておきましょう。
妊娠検査の費用は平均8,000円~2万円
妊娠検査の費用は8,000円~2万円の自己負担となるのが一般的といわれています。
妊娠検査を受ける際は、事前に病院のホームページなどで検査にかかる費用について調べておくと安心です。
クレジットカードが使えるかなど、病院ごとに支払方法も異なります。念のため、現金を多めに準備しておくことをおすすめします。
まとめ
妊娠検査の際に病院を受診するタイミングの目安は、最後に生理が始まった日から5週後半〜6週前半とされています。適切なタイミングで受診しないと、妊娠について正確な判断ができないため注意が必要です。
また、市販の妊娠検査薬は、次の生理予定日の1週間後から使えます。病院を受診する前に、まずは自宅で検査しておくことをおすすめします。加えて普段から基礎体温を測っておくなど、普段から妊娠の有無についてチェックできる環境を整えることが重要です。
妊娠検査は健康保険が適用されませんが、思わぬ事態の際には健康保険証を使用する場合があります。病院を受診する際は、健康保険証を必ず持っていきましょう。
最後になりましたが、ぜひご主人、パートナーと一緒に受診してください。未来のパパも未来の赤ちゃんと対面して感慨ひとしお。育児に対する心構えも。
笑顔の天使がおふたりの元へ舞い降りてくる日が訪れることを心よりお祈り申し上げます。