妊婦健診の実際の内容・流れについて
前回、妊婦健診の有用性についてお話ししましたが、では実際の妊婦健診の流れと、週数ごとの検査についてお話ししましょう。
妊娠初期から出産まで、妊婦健診は定期的に行われます。妊婦健診では、妊娠の進行状況や母体の体調、胎児の成長状況などを確認するため様々な検査が行われます。一般的には月に1回〜2回の頻度で行われ、妊娠期間中に合計で14回程度の健診が行われます。
・尿検査(妊娠反応)
・超音波(エコー)検査
・血液検査
・子宮がん検診
・予定日の決定
・出生前検査
妊婦健診のスケジュールや内容については、主治医の先生と相談しながら進めていきましょう。
妊娠したかも:妊娠の確認
尿検査・妊娠反応
妊娠の初回検査では、尿検査による妊娠判定を行います。妊娠ホルモンであるHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の量を測定し、妊娠の有無を確認します。尿検査は自宅で簡単に行うことができるため、病院に行く前に自己検査をすることもできます。
エコー検査
尿検査で妊娠が確認された場合、次にエコー検査が行われます。妊娠初期ではまず、胎嚢が子宮内にあるかの確認をします。胎嚢、卵黄嚢、胎芽、心拍の確認。引き続き頭殿長(赤ちゃんの頭の先からおしりまでの長さ)より分娩予定日の決定を行います。また大きな異常、奇形がないかチェックします。
* NT計測や胎児ドックは通常の超音波には含まれません。胎児診断は出生前検査の一つとなります。
当院の場合はエコーで胎嚢が確認できれば尿検査は行いません。
妊婦健診の回数は基本的には国が示す実施基準に沿った回数(合計14回)を行うことが原則となりますが、妊娠12週ごろまでの妊娠初期の時期には、流産、異所性妊娠(子宮外妊娠など)、重症悪阻といった緊急対応が必要な異常妊娠の発生頻度が低くないため、妊娠反応が出てから、子宮内の胎嚢の確認、胎芽心拍確認、分娩予定日決定、初期の血液検査など妊娠12週ごろまでに3〜4回程度のチェックが推奨されています。
当院では初診で胎嚢が確認された場合、毎回エコーで胎児の観察に加え、2回目に子宮がん検査、3回目に初期血液検査、4回目に検査結果をお話しし、妊娠12週頃からベッド上で腹囲、子宮底の計測、お腹の上からエコーで胎児の観察を行なっていきます。
妊娠初期の血液検査
妊娠初期に血液検査を行います。
1・血液型:ABO式血液型、Rh式血液型、不規則抗体スクリーニング
※ ABO式、Rh式血液型は輸血が必要な場合やABO式、Rh式血液型不適合による新生児溶血性黄疸の情報になります
2・血算
3・各種感染症:HBs抗原(B型肝炎)、HCV抗体(C型肝炎)、風疹抗体、梅毒スクリーニング、HTLV-1抗体、HIVスクリーニング、トキソプラズマ抗体
4・血糖
が推奨されています。
《不規則抗体》
ヒトの赤血球にはABO、Rhの他に300種あまりの赤血球抗原、つまりABO以外にもたくさんの種類の血液型があります。ABO血液型に対する抗体については、規則的に存在する抗A、抗B、抗A,Bがあり、一方ABO以外の血液型に対する抗体は不規則抗体と呼ばれます。不規則抗体が陽性の場合、抗体を同定します。一部の不規則抗体は副作用(溶血)を引き起こすことがあるので、妊娠中のfollow up、輸血時は抗体陰性の血液を用います。
たまにご自分の血液型をご存じない方、まちがって覚えている方がいらっしゃいます。いままで、両親から産まれてくるはずのない血液型の方はいらっしゃいませんでした(笑)
《新生児溶血性黄疸》
「黄疸」とは一言で言うと“皮膚が黄色くなる”ことです。結石や肝炎、がんなどで現れますね。これは赤血球の中のビリルビンによるもので、生まれたての赤ちゃんの場合は生理的に黄疸が出やすく、ほとんどが数日で消失しますが、血液型不適合、特にRh式血液型不適合の場合、はじめての妊娠で母親がRh (-)で父親がRh (+)で、胎児がRh (+)の場合、Rh (+)の第二子を妊娠した時、母親の抗体が胎児に移行し、胎児の赤血球を破壊し、重症例では胎児死亡に至ります。
たまにご自分の血液型をご存じない方、まちがって覚えている方がいらっしゃいます。いままで、両親から産まれてくるはずのない血液型の方はいらっしゃいませんでした(笑)
血算:白血球、赤血球、血色素、血小板
白血球は感染や炎症があると高くなります。妊娠中はやや高めになります。まれに血液疾患によることも。
赤血球、血色素
貧血の有無がわかります。妊娠中後期になると生理的に貧血になります。
血小板:血液疾患により低下することがあります。
各種感染症
母体や胎児に悪影響を及ぼす感染症のチェックです。のちほど詳しくお話しします。
血糖
妊娠糖尿病のスクリーニング検査です。中期に負荷試験(50gGCT)を行います。
子宮がん検診
妊娠初期に子宮がん検診(子宮頸部細胞診検査)を行います。子宮がん検診は赤ちゃんとは無関係ですが、20〜40歳代は子宮頸がんの好発年齢ですので、スクリーニング検査として行います。
予定日の決定
エコーにより分娩予定日を決定します。月経周期が順調であれば、最後の月経開始日を妊娠0週0日として妊娠40週0日目が予定日になります。月経周期が不順、バラバラの方は赤ちゃんの身長(頭殿長)から検査日の週数、予定日を推定します。周期が順調な方も最終的にはエコーで確認します。
出生前検査
希望者には出生前検査を行います。NIPT(新型DNA検査)は10週以降、クワトロテストは15週以降です。
妊娠週数 | 健診頻度 | 検査週数 | 検査内容 |
12週〜23週 | 4週間隔 | 20週頃 |
通常超音波検査 胎児発育、胎盤位置、羊水量などのチェック |
18週〜24週 | 子宮頸管長測定1) | ||
24週〜35週 | 2週間隔 | 24週〜28週 |
妊娠糖尿のスクリーニング検査 貧血検査 |
30週頃まで | クラミジア検査・HTLV-1検査 | ||
30週頃 | 通常超音波検査 | ||
36週以降 | 毎週 | 35週〜37週 | GBS培養検査 |
37週頃 | 貧血検査 | ||
37週頃 | 通常超音波検査等により巨大児の可能性評価 | ||
41週以降 | 週2回以上 |
ノンストレステストによる胎児評価 内診による頸管塾化度評価 |
施設によって若干の違いはありますが、おおむねこのようなスケジュールです。
次回より実際の妊婦健診についてご説明していきます。