妊娠中に注意する漢方
妊娠中のマイナートラブルに私たちはよく漢方薬を処方します。また妊婦さんたちも漢方ならと比較的抵抗なくお飲みになられます。実際、漢方薬による催奇形性の報告はありません。しかし“漢方薬はすべて安全”というのは誤りでなかには副作用のある場合や妊娠中は控えた方が良いものもあります。
妊産婦、授乳婦への漢方薬の投与については「妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」の扱いです。
また二千年を超える長い使用実績から膨大なデータの蓄積があり、妊娠中に服用すると流産の危険性がある瀉下剤や催奇形性のある生薬は禁忌あるいは慎重投与となっています。特に器官形成期(妊娠初期)は漢方薬といえども薬物であり極力内服は控えたいものです。
慎重投与の生薬が含まれている漢方薬もいくつか本文で紹介しました。慎重投与の薬は“絶対飲んではダメ!”というわけではありません。症状を治めるため短期間の投与では問題にならないことが多いため、あまり神経質にならず主治医の先生の指示に従ってください。
なお投与禁忌の薬は通常処方されるエキス剤には含まれていません。
慎重投与
子宮収縮:紅花、牛漆、枳実、大黄など
利尿作用:乾姜、厚朴、呉茱萸、附子、芒硝など
酸棗仁、桃仁、牡丹皮、半夏、薄荷、薏苡仁など
禁忌(漢方エキス剤には含まれていない)
峻下逐水剤:巴豆、甘遂、商陸
催吐剤:瓜蔕
麻酔薬:洋金花
流産薬:山稜、莪朮、水蛭、虻虫、シャ虫
通窮薬:麝香
その他の劇薬:水銀、砒石