RSウイルスワクチン 『アブリスボ』 投与開始のお知らせ
RSウイルスワクチン 『アブリスボ』
今回、乳幼児のRSウイルス感染症に対するワクチン『アブリスボR 筋注用』が認可されました。
RSウイルス感染症に対する有効な治療法はなく対症療法のみです。特効薬がなくインフルエンザのようなワクチンもないため予防することに意味があります。
※重症化予防薬としてパリビズマブ(シナジス)がありますが適応が早産児、先天性心疾患や免疫不全、ダウン症などを有する赤ちゃんに限られています。
【RSウイルス感染症とは】
RSウイルス感染症はRespiratory Syncytial Virus(RSV) というウイルスが原因で引き起こされる感染症で5類感染症に指定されており、小児科定点把握対象疾患です。
【どんな症状ですか】
生後1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が感染します。症状は感冒症状から、上気道症状(鼻閉、鼻水、くしゃみ)、下気道症状(咳、呼吸困難、喘鳴:ゼーゼー、ゼコゼコ)まで様々で、典型的には4〜6日の潜伏期間のあと鼻水が数日続きその後、咳を認めるようになります。発熱はないこともあり、5〜7日でピークを迎えその後軽快していきます。成人にとっては風邪程度で済むことがほとんどですが、6ヶ月未満の乳児では重症化しやすく、肺炎、無呼吸、急性脳症なども引き起こし、その後の気管支喘息との関係も指摘されています。
【どのくらいの子供がかかるの】
RSウイルス感染症は1歳未満の乳児の肺炎や気管支炎の原因として最も多いウイルスで、日本では、年間12〜14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、約3万人が入院加療を行っています。生後6ヶ月以内に感染すると約20%が入院、早産児や病気のある赤ちゃんでは60%が入院し、入院児の約1%が亡くなるといわれています。
母子免疫ワクチン「アブリスボR 筋注用」
妊婦さんに接種することにより、母体のRSウィルスに対する中和抗体価が高まり、その抗体が胎盤を通して胎児に移行することで、出生時から乳児のRSウィルス感染症を予防する母子免疫ワクチンです。臨床実験で妊娠28週から36週の間の摂取で有効性が高くなることがわかっています。効果は出生後6か月間期待できます。
【接種の対象は】
妊娠24~36週の妊婦さんが対象ですが、有効性の面からは妊娠28〜36週が最も望ましいです。
【ワクチンの効果は】
生後6ヶ月経過の時点で、RSウイルス感染症の重症化予防効果は、妊娠28週〜32週未満の接種で88.5%、32週〜36週で76.5%と高い予防効果が確認されています。
【投与方法は?】
0.5mlを1回、筋肉注射します。
【安全性は?】
非投与群と比較して、報告された有害事象の発現率は同程度であり、安全性の懸念は認めませんでした。
日本以外ではすでに投与が行われており、アメリカ食品医薬品局(FDA)、米国疾病管理予防センター(CDC)、欧州医薬品庁(EMA)から承認を取得しており、世界的にも安全性が確認され一般的に使用されているワクチンです。
【副作用は?】
大きな副作用はありません。
その他ワクチンと同程度の、注射部位反応、倦怠感などがございます。
【価格は?】
33,000円(税込)
他院で健診中の方は 赤ちゃんの元気を確認しますのでエコー施行後の接種となります。
【接種開始後の印象】
2024年6月より接種を開始しました。
当初高価なワクチンなので希望者は少ないだろうと予想していましたが「上の子が入院した」「家族で大変だった」「今でも喘息っぽい」とか、小児科ドクターの妊婦さんからは「入院ベッドがいっぱいになった」、麻酔科のドクターは「ICUに入ってくる」など、私たち産科医は知らなかったのですが小児科界隈で実は悪名高いようで多数の妊婦さんが接種されています。
また、大きな病院では新しいワクチンの採用に時間がかかり、採用の予定がない施設もあるため大病院や大学病院通院中の妊婦さんが接種に来られます。
ぜひみなさんも接種をご検討ください。